勝真太郎のウエスタンラリアット
連載第四十一回
  「たまには、季節を感じて走ろう」  
   
   今日は、余計なお世話の話でもしよう。いや、わたしが、余計なお世話を喰らったわけではない。わたしが、読者の諸兄に、余計なお世話を施そうと言うのである。その対象者は、オープンカーに乗っているドライバーだ。
 さて、わたしはオープンカーが大好きである。いまは残念ながら手元に置く余裕がないが、その昔MGに乗ってたときには、炎天下であろうが木枯らしピューピューであろうが、必ず幌を開けて走ったものである。当然、編集部のコボちゃんがJeepに乗ってた時代は、オープンで走ることを強要したものだ。
 もちろん、オープンカーなんて本来、ストイックな乗り物であるからして、直射日光で熱くなったシフトレバーで手のひらを火傷したこともあったし、信号待ちで鼻水タラして、横断歩道の女に笑われたこともあった。わたしなどまだカワイイほうで、実際、日射病で倒れた奴もいれば、凍傷で指を落としかけた奴だっている。肺炎を拗らせて死んだ奴だって、きっといるはずなのだ。
 でも、そういうのは単なるヤセガマンであって、ほんとはオープンカーに乗ってるワケは、オープンが気持ちがいいからであって、でもオープンで気持ちがいいのは、一年に数日あるかないか、なのである。で、そんなオープンが一年でいちばん気持ちのいいシーズンがやってきた。この季節、まるで短い夏を惜しむかのように裸になる北欧の人のように、寸暇を惜しんで幌を降ろすべきなのは言うまでもない。
   ところが、である。木々の葉が色づきはじめ、街の表情が豊かになってきた、この、めちゃんこ気持ちのいい秋の昼下がりのシティロードにもかかわらず、幌を閉めちゃって走ってるオープンカーの、なんと多いことか。理由を聞いてみると、風を巻き込んで髪が乱れるとか、周囲の音がうるさいとか、排気ガスが臭いとか、幌を開けるのが面倒だとか、そういう理由なのである。だったら、はじめっからクーペやセダンを買えばいいじゃないか。
 まあ、そういうドライバーのほとんどは、マツダのユーノスに乗っている。これがJeepのオーナーなんかだと、もともと幌を持ってなかったりするから、ガルヴィ読者には縁の薄い話かもしれない。だが、パジェロもチェロキーも、ランクルもレンジローバーも、ビッグホーンもテラノも、サファリもエスクードも、とにかくわたしたちは空調の効いたクルマの中にいることに、慣れすぎているんじゃないだろうか。
 この季節、たまには窓を開けて走ろう。窓から入る風は、クルマが走っていることの証明だ。排気ガスが臭かったら、それは、自分も臭い排気ガスを出している、という事実の確認だ。そうして、たまには自分の五感で、風を感じてみよう。やがてきっと、秋の匂いを感じられるだろう。そのときあなたは、きっとオープンカーが欲しくなるのである。
 
 
「勝真太郎のウエスタンラリアット」
月刊ガルヴィ(実業之日本社)
1994年11月号掲載