勝真太郎のウエスタンラリアット
連載第三十六回
  「クリントンに手紙を書こう」  
   
   最近、ナツカシモノが流行っている。TVでも、歌番組と言えばピンクレディ特集だったり、ばんばひろふみがでてきて♪いちご白書をもう一度なんかを歌ったりと、決まって70年代とかに流行った歌の特集だったりする。また“衝撃の映像”なんて報道特集番組でも、結局のところはダッコちゃんブームだの東京オリンピックだの高度経済成長だの万博だのナツカシモノばっかり。あのころはよかったなぁ。みんな夢を持ってたよなぁ……のオンパレードなのだ。いまの時代、いかに夢がないかの証明だよね、これは。
 で、先日、そんな番組の1コーナーで、所得倍増計画時代の、ガムシャラに働く日本人たちを映したものがあった。冷蔵庫、洗濯機、テレビの家電三種の神器から、カラーテレビ、クーラー、カーの3Cへと人々の物欲は拡大し、神風ダンプやら雲助タクシーが社会問題になり、ついには“交通戦争”という言葉が生まれたのだった……てな内容で、TVはオート三輪などボンネットトラックだの観音開きドアのタクシーなどが、モノクロの、傷だらけのフィルムの中で元気に走り回っている、当時の日本の交通事情を映し出した。
 インフラ整備もないままに、産業優先の政策のもとクルマがガンガン走り、スモッグに都会の空はよどみ、交差点では歩行者が逃げまどう。短い青信号の横断歩道を駆け足でわたる親子連れ。子どもの靴が脱げ、それを拾おうとしゃがみ込んだ瞬間、彼らは乗用車にハネられてしまった……。ああ、恐るべし、60〜70年代。
   あれ、おい、ちょっと待てよ。ああ、あんな時代もあったなあと懐かしむ年配の人。へー、こんな野蛮な時代もあったのねと驚く若年者。いまじゃ、こんなに人とクルマが仲良く共存できているのにね……ってのなら、話はわかる。ところが、あれま、なんということか。確かにクルマは高性能になったし、高速道路の総距離も伸びた。しかし、まもなく21世紀を迎えようかという時代になっても、歩行者とクルマの敵対関係や、産業優先の道路対策など、交通の状況は東京オリンピックの昔とナニも変わっちゃいないじゃないか。
 歩行者とクルマの共存なんて、誰も手をつけちゃいないし、NOx規制だって大型トラックは野放しでRVユーザーをイジめただけだし、この国の行政は、もうだめだな。30年前に、すでに官僚の連中の進化は終わっていたのだ。彼らを矯正するには、もはや、外圧に頼るしかない。よし、こうなったら、みんなでアメリカ人になろう。アメリカ人になって、クリントンに励ましのお手紙を書こうじゃないか。HEY! プレジデント閣下。あんたは正しいぜ。世界経済がおかしいのも、アメリカの失業率が高いのも、みんなニッポンのカンリョウが悪いんだぜ。
 ホント、そうかもしれない。銃で撃たれるのはイヤだけど、少なくともどっちの道を走りたいかと聞かれれば、わたしはアメリカの道を選ぶもんね。
 
 
「勝真太郎のウエスタンラリアット」
月刊ガルヴィ(実業之日本社)
1994年6月号掲載